2020年7月22日水曜日

高校数学をリタイアした人のための数学 第2回 ~定義ってなんだ?~

数学が嫌いになる心理的メカニズムはご理解いただけたことと思う。次に,技術的な話をしよう。つまり,具体的に数学が分からなくなり,数学が嫌いになったきっかけの話だ。

タイトルでネタバレをしているが,要するに,『定義』がすべて悪い,と私は考える。中学校2年生で習うこの言葉は,実は,小学校のうちからさまざまに形を変えて習っていたものであり,算数・数学を本格的に分かるためには,避けては通れない道なのだ。

 

さて,早速『定義』とは何かを説明していく。

 

定義 ある概念内容・語義や処理手続をはっきりと定めること。それを述べたもの。

 

これが意味らしいのだが,要するに,これが『定義』の定義であるわけだ。

定義とは,あるものに意味を持たせ,誰もが同じものを思い浮かべられるように,言葉でつくったきまりのことである。なお,数学者でもない限り,定義は1通りに定める。

こういうのは,例をもって示すのが一番手っ取り早い。

例えば,『三角形』を定義してみよう。

三角形をだれでもわかるように説明してみればよい。まずは,自分なりの答えをかいてみよう。

 

出来ただろうか。では,一番簡単な定義を述べると

3本の直線で囲まれたできた図形

となる。見覚えがあるなら,かなりの記憶力かもしれない。そう,小学校1年生の算数の教科書に載っている表現である。もっとも,元の文はすべてひらがなであったが。

しかし,素晴らしく簡潔な定義である。我々が考えるべきは,本当に,誰もがこの定義から三角形のあの形を想像できるかどうかである。実際にやってみるとよい。

 

やればわかるが,3本の直線で囲もうとすると,平行な直線があるとうまくいかない。また,3本の直線がちょうど1点で交わるときもダメである。

すると,3本の直線で囲まれた図形が出来るとき,たしかにその囲まれた図形というのは三角形の形をしている。しっかりと定義されていることが分かった瞬間である。

もっとも,数学者の皆様方は,これでは不十分だとのたまい始める。点・直線・線分などを厳密に定義することでもっときれいな定義を作ろうとするのだ。まあ,こうして作られるそれこそめんどうな定義についてはここでは取り扱わない。これが正しいというものを例えば私が提示したとしても,数学者の皆様にはご納得していただけないかもしれないからだ。

 

結局定義とは,数学的なめんどうくさいものであることを示しただけに終わったが,ところで,先ほどの三角形,別な定義を考えた方はいないだろうか。例えば,

3つの角を持つ図形

などである。これではダメなのかどうか,という疑問を持つ方もいるだろう。

まずは結論から申し上げる。ダメである。では,なぜダメかという問題が出てくるわけだが,まず根本的に,『定義は偉い人が決めたものだから,そのままの形で覚えなくてはいけないものである』という大原則を知っていただきたい。一般的にはこの時点で,先ほどの定義ではダメであるというのがわかっていただけることであろう。

しかし,気に食わない。数学とかいう理屈をこねくり回す連中が,決まりだから覚える,で納得しているのだろうか。まして,数学を教える側の人間は,普段,途中の考えを~とお説教するクセに,定義だけは覚える,で納得するのか。

 

その答えは,実にシンプルな結論である。実は,先人数学者たちが議論に議論を重ねて現代に使われる定義があり,それ以外のものは,反論が存在するのだ。

では,3つの角を持つ図形を描いて差し上げよう。

 

…どうだろうか。何か反論を考えてもらっても結構である。しかし,たいていかたがつく。

そもそも,角とは何だろう。直線と直線が交わった部分ではなかろうか。つまりは,直線が交わるという表現を使わなければ角を表すことができないのである。

上の図はどうだろう。確かに直線が交わる部分はあるのだが,曲線も含まれている。これがズルいと感じるポイントかもしれない。だったら,先ほどの定義を書き換えてみよう。

3つの角を持つ,直線だけで作られた図形

なるほど,これなら正解かもしれないが,ところで,3つの角を持つためには直線は何本必要かを考えると3本でいいわけで,結局,3本の直線が作るのが3つの角を持つ図形ではないか。

要するに,角の条件は気づくと直線の条件に置き換わっているわけである。そして,角だけで定義を作ろうとすると,結局直線の話をしないわけにはいかないので,二度手間になる。だから,直線だけで定義したほうが良い。という結論になるわけだ。

要するに皆さんが好きに作る定義でももしかしたらよいのかもしれないが,現在,『定義』と呼ばれるものは,歴代の偉大なる数学者の知恵が秘められており,とても簡潔でしっかりしているものである可能性が高い。

数学が苦手になるきっかけはこの定義とかいう言葉だったろうが,今から数学を学ぶならば,今後はこの定義にもっと関心を持つとよいだろう。そこには,数学のめんどうくささがいっぱい詰まっていて,そのめんどうくささこそが数学の本質なのだから。


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